
10月初め、店頭に張り出された突然のお知らせに、柏崎に衝撃が走りました。
柏崎の老舗ラーメン店「そばよし」が、2025年11月3日をもって52年の歴史に幕を下ろします。
閉店のお知らせが出てからというもの、連日、開店前からお店の前には長い行列。
お忙しい最中にも関わらず、店主の西村伯和(はくわ)さんが、笑顔でインタビューに応じてくださいました!

◆想定外の行列に「たまげた!」
「いや~!本当に想定外でした。もう、たまげた、たまげた!」と西村さんは言います。
閉店を知ったお客様が詰めかけ、用意していた自家製麺が無くなって臨時休業した日もありました。
連休中には午前11時の開店から、わずか10分で「本日終了」の案内が!
最後尾のお客様が入店できたのは午後5時半過ぎだったと言います。
「お客さんの数? 数えてないからわからないよ。
数える暇があったら、待ってくれているお客さんに少しでも早く出したいからね。」と西村さんは話します。
現在は昼営業のみ。
閉店案内を出した直後は夜の部も続けていましたが、片付けが終わってお店を出られるのが深夜0時過ぎ。
負担が大きかったそうです。
「申し訳ないけれど、今は昼の部だけにさせてもらっています。
電話でのテイクアウト注文も対応しきれなくて、お断りしているんです。」と語ります。
西村さんによると、現在は市外・県外のお客様が多いそうです。
昔、柏崎で食べた思い出の味を求めて、東京、宮城、群馬など全国から多くのファンが訪れていると言います。
「『大阪から夜行バスで来た』って話すお客さんもいたよ。
『高校時代によく食べに来ていました』なんてね。本当にありがたいね。」
それは、長年愛されてきた「そばよし」の味が、今も多くの人の記憶に残っている証です。
一方で、気軽に立ち寄ることができなくなった地元の常連客にも心を寄せます。
「地元の常連さんには、対応しきれなくて本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。」
◆元気なうちに、自分の手で終わらせたい
改めて閉店を決意した理由を尋ねると、西村さんは穏やかに答えます。
「病気とかではないんですよ。
ただ、以前から私の中では、80歳を越えてまではできない、と思っていたんです。
仕事をしながら体を壊したくない。元気なうちに、自分の手で終わりにしたかったんです。」
現在、79歳の西村さん。
「この1か月間が52年間で一番疲れた!」と笑います。
「同級生で第一線で続けている人は、もうほとんどいません。だから、これが引き際かなと思いました。」
引き際を決めた今の気持ちをうかがうと、
「寂しいとか、そういう気持ちは今はないですね。
とにかく、来てくれたお客さんに感謝の気持ちを込めて出したいという思いだけです。
それが、閉店が近づいてくると、どういう心境になるのかなぁ。」と西村さんは言います。
◆52年間、初心を忘れない
これまで大きな病気もせず、客足も絶えずに順調にお店を続けてこられたと話す西村さん。
52年間もお元気で続けられた秘訣を尋ねると、
「頭が軽いから!」と茶目っ気たっぷり。
「私はね、本当にスタッフに恵まれているんですよ。」
と語り、長年ともに働く奥様やスタッフの皆さんへの感謝を口にします。
そして真剣な表情で「初心を忘れないこと。それだけはずっと心に決めてやってきました。
客商売ですから、店を開けたら、来てくれたお客さんのことを第一に、誠心誠意、丁寧にやる。
初心を忘れずに、絶対にマンネリ化した気持ちを持たないこと。これが自分の信念です。」と語ります。

◆味は人が作る、同じものは作れない
そんな「そばよし」の味を引き継ぐ予定はあるのか聞いてみたところ、西村さんははっきりと語りました。
「のれん分けや、店を継ぎたいという話もありましたが、すべてお断りしました。
食べ物というのは、人が変われば味も変わるんです。
塩ひとつ、スープひとつ、麺の上げが早い、遅い、そこで味が変わってくる。
同じように作っても、作る人が変わると、同じものを出すことは難しいんですよ。
だから誰かに継いでもらうことは、当初から一切考えていません。」
◆「街ガチャ」で話題に
「そばよし」は以前、私たちシーズン柏崎が企画した「街ガチャ in 柏崎市 第2弾」にも参加してくださいました。(第2弾は販売終了)
「街ガチャ」は柏崎の名店や名物をキーホルダーにしたガチャガチャです。
「そばよし」は名物の花びらチャーシューメンをキーホルダーのモチーフにしました。
当時の反響を西村さんにうかがうと、
「あれは人気だったね。『10回やっても、そばよしのキーホルダーが出なかった!』って言うお客さんもいたよ。
スタッフの子たちも『ほしい!』って言ってね、今もキーホールダーを使ってるよ。」
花びらチャーシューメンのキーホルダーを手に取りながら、西村さんは目を細めました。

◆地元の皆さんへの想い
最後に、西村さんに柏崎の皆さんへのメッセージをお願いしました。
「柏崎のお客さんには正直言って、お詫びをしたい、という一心なんです。
地元の常連さんに、この1か月間、この大事な時に作れないということが、もう心苦しくて。
『常連の日を作ってくれよ』なんて言うお客さんもいました。
対応しきれなくて、本当に申し訳ない気持ちです。
それでも、ここまで続けてこられたのは、常連さんや柏崎の皆さんが支えてくださったおかげです。
これまで本当にありがとうございました。」
柏崎の地で、52年の歴史を刻んだ「そばよし」。
連日の大行列で大忙しにも関わらず、気さくな笑顔でお客さん一人ひとりに声をかける西村さん。
閉店の日まで、西村さんは52年の感謝を込めて、目の前のお客様へ渾身の一杯を提供し続けます。

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《店舗情報》
店名:そばよし
住所:柏崎市駅前2丁目1-70
TEL:0257-23-9337


